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松屋銀座の「川喜田半泥子のすべて展」
チラシ
「はんでいし」ってどんな意味だろうか。川喜田半泥子(1878〜1963)は昭和の陶芸界にあって「破格」「昭和の光悦」とまで称された人物である。
「泥(なず)む」とは辞書で調べると、こだわる、難渋する、打ち込むなどとあって、川喜田は自己の特性なり創作への姿勢を、この「泥」に込めたと思われる。熱中しもがく自分が半分、あとは…さぁてどうしようかねぇ? 銀座の松屋で開かれた「すべて展」では、そんな彼の名前の通りの作品が並んでいた。
 半泥子は実の名を久太夫政令(きゅうだゆうまさのり)といって、寛永年間から続く綿花問屋の長男として生を受けている。1歳の時、祖父と父が相次いで亡くなったことで、ただちに家督を相続、25歳の時には地元の百五銀行(三重県津市)の取締役に就任、長く実業の世界で活躍した人物だった(のちに頭取に)。いってみれば大変なお金持ちであり、彼は邸宅のあった千歳山に窯を築き作陶に打ち込んだのも50歳を過ぎてからだった。
 
展覧会の図録表紙
 
 食うためにあくせくと碗を売る必要はなく、人生の後半、自己の熱中のために窯へ火を入れることのできた半泥子だったが、では彼が今にいうアマチュアだったかと言えばそれは違う。何が違うか。作品に出る知性の質が違う。研鑽に研鑽を重ねた上で(ここが彼の心の中の、熱中という半分)、あとの半分は遊んでみたり、自分自身をからかってみたりと、熱中や苦心そのものを別の地点から面白がるその心の余裕が並外れている。代表的作品として知られる「大侘び茶碗 銘・残月」「大侘び茶碗 銘・大吹雪」「志野茶碗 銘・赤不動」などに表わされた、大胆不敵な意欲を陶芸研究と自己の技術とで掛け合わせれば、人はどのように感動するか、彼はどこかで笑いながら、同時に冷徹に見据えている。織部、楽、志野、井戸ほか、彼が範としたスタイルは多数あるが、どれもが範からズレて、なおかつ美しい。いわゆるプロからすれば、半泥子は恐るべき表現者だったはずである。
 さらに面白いのは「からひね会」である。太平洋戦争の末期である1942年、彼はこの会を結成する。半泥子の呼びかけに集まったのは金森陶陽(備前)、荒川豊蔵(美濃)、十代・三輪休雪(萩)の3名。彼ら、こんにち歴史に名をとどめる陶芸家を自宅に集め、これからのことを、みんなで布団にもぐりこんでも話し合あったそうである。「からひね会」は、陶芸の実力はもちろんのこと、銀行マンとして大勢の人を動かしてきた指導者・川喜田久太夫政令の重みなしにありえない。そして、そんな「重み」をかき消すかのようなジョークやシャレが散見されるのも半泥子の特色である。たとえば、彼の泥仏堂に据えられた厨子の扉の内側に書かれた文字が「杷和遊」と「喊阿厳」。これは「How are you ?(こんにちは)」と「Come again. (また来てね)」のシャレ(そして厨子の中に鎮座するのが自分の御像だ)。また、置くとコロコロと転がってしまう茶杓に付けた銘が「角兵衛獅子」。花入には「ステレンチョ」という銘のものもある。これは上方落語の「テレスコ」から取ったものだ。マジメなお茶席で、みながどう反応するか、それを考えるだけで可笑しくてしょうがないという半泥子の、往年の姿が見えるようだ。
 半泥子は若い頃から洋画や写真に親しんだ人だった。今回の「すべて展」には、アジアやヨーロッパなどに旅行した際のスケッチほか、写真、書画など、各方面で実力を発揮したことを伝える展示になっていたが、半泥子の評価が本展覧会よってさらに高まることになるだろう。       (開催期間:2009年12月30日〜2010年1月18日)

川喜田半泥子のすべて展:
http://www.matsuya.com/ginza/topics/100118e_kawakita/index.html
 
(文・TADASHI / 2010年1月18日)
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〈茶道〉

茶道へのお誘い
 茶道は、日本の伝統的土壌から生まれ出た世界に誇る総合芸術です。
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 茶道は、村田珠光(むらた・じゅこう)、武野紹鴎(たけの・じょうおう)らを先駆として、千利休(せんのりきゅう/1522〜1591年)が完成させたとされます。
 いわゆる、侘茶(わびちゃ)。簡素静寂を究極とする日本独自の美がここに生まれ、今に至ります。
 みなさんも、そんなお茶の世界を、覗いてみてはいかがでしょうか。
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